【調査報告】猛暑の校舎で見えた限界。30校の定期調査から問う「子供たちの安全」の現在地
公共建築の長寿命化が叫ばれて久しいですが、その最前線である「学校」の現状をご存知でしょうか。
今年、私たちは自治体からの依頼を受け、夏休み期間中に30校に及ぶ中学校の建築物・建築設備定期調査を実施しました。しかし、そこで目にしたのは「経年劣化」という言葉では片付けられない、限界を迎えた学び舎の姿でした。
本来、子供たちが安心して学びに集中すべき空間が、なぜこれほどまで放置されているのか。調査結果から見えてきた「対症療法の限界」と、今すぐ必要な抜本的改修への提言をまとめました。
- 悲鳴を上げるRC(鉄筋コンクリート)造のシェルター
真夏の直射日光を浴び続ける校舎は、表面温度が50℃を超えることも珍しくありません。熱を溜め込んだコンクリートは、夜間も冷めることなく膨張と収縮を繰り返し、その寿命を削っています。
外壁の爆裂と剥落の恐怖 30校を巡回すると、多くの校舎でコンクリート内部の鉄筋が錆びて膨張し、表面を押し出す「爆裂」現象が確認されました。生徒が通る通路の真上で、今にも剥がれ落ちそうなタイルやコンクリート片を見つけるたび、背筋が凍る思いがします。
内壁まで及ぶひび割れ 外壁だけでなく、教室内の壁面にも深いクラック(ひび割れ)が走っています。これは単なる表面の傷みではなく、構造全体の健全性が失われつつあるサインです。
- 機能不全に陥ったライフライン
建物という「器」だけでなく、そこで活動するための「設備」もまた、深刻な不全状態にあります。
止まった換気、滞る空気 感染症対策や熱中症対策で最も重要とされる換気設備。しかし、調査した中には、モーターが焼き付き、異音を立てて止まったままの個体が数多く存在しました。
老朽化した給排水設備のジレンマ 配管の腐食による漏水や、錆の混じった水。子供たちが毎日使うトイレや手洗い場といった衛生環境が、かろうじて「つながっている」だけの綱渡り状態で維持されています。
- 「対症療法」という名の先送りが生むリスク
現状、多くの自治体では予算の制約から、壊れた箇所だけを直す「事後保全(対症療法)」が主流です。しかし、今回の30校一斉調査で確信したのは、「もうパッチワークでは追いつかない」という現実です。
部分的な補修を繰り返しても、他の箇所が次々と連鎖的に壊れていく。この「いたちごっこ」は、結果として修繕コストを増大させ、何より子供たちを常に「不完全な建物」の中に置くことになります。
- 今こそ、未来への投資として予算拡充を
学校は、地域にとっての避難所であり、未来を担う子供たちの家でもあります。 「予算がない」という理由で、安全の優先順位を下げ続けることは許されません。
今回の調査で浮き彫りになったのは、戦後から高度経済成長期に建てられた校舎群が一斉に限界を迎えているという「警告」です。今、必要なのは小手先の修繕ではなく、抜本的な改修・建て替えを見据えた大規模な予算投入です。
安全は、失われてからでは取り返しがつきません。 この夏、40℃近い校舎で私たちが感じた危機感が、行政を動かす一助となることを切に願っています。

